この記事にたどり着いたということは、日々の業務や育児、家事、仕事に心身ともにお疲れかもしれません。ほんとうにおつかれさまです。
安心してください。ヨガは心身の健康と調和を追求する素晴らしい方法です。ヨガを実践する際、多くの人が重要性を見落としがちなのが呼吸法です。本記事では、「ヨガと呼吸」に焦点を当て、なぜ呼吸法がヨガの基本であるか、そしてそれが心身の調和とリラクゼーションにどのように貢献するかを詳しく説明します。
呼吸とヨガ: 基本の基本
ヨガは、呼吸と緊張を管理し、心身の調和を実現するための強力な方法です。ヨガの本質は「呼吸」にあると言っても過言ではありません。呼吸法は、ヨガの中心的な要素であり、心の平静と身体の柔軟性を高める鍵となります。
呼吸とは
生理学的には、呼吸は2つの種類があります。
外呼吸:空気と血液との間で行われるガス交換(酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出)
内呼吸:血液と細胞との間で行われるガス交換(細胞が二酸化炭素を排出し血液に放出)
FIRSTSHIP. RYT200テキスト
外呼吸は見ての通り、鼻や口から息を吸って、肺へと流れていく、わたしたちがいつも身近に使っている呼吸です。肺でガス交換され、毛細血管に酸素が取り込まれます。そして酸素は心臓へと送られ、全身に血液を介していき渡ります。内呼吸はその後、全身に行き渡った血液から酸素が細胞へ移動する部分を指しています。このように、わたしたちの体内では知らないうちに酸素がひとつひとつの細胞に行き渡され、循環し、生命活動が維持されているのですね。
呼吸の役割
呼吸の役割は以下の3つが挙げられます。
①空気中から酸素を体内に取り入れ、エネルギーを生成すること。 ②エネルギーを生成したあと(細胞の代謝)、生じた二酸化炭素を体外に排出すること。 ③体温を一定に保つこと。
生理学的にみると、酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するというシンプルな言葉に置き換えられます。しかし、ヨガにおいては呼吸をコントロールすることが、心の安定をもたらし、深い瞑想に導くと考えます。
プラーナヤーマの力: ヨガ呼吸法の基本
「プラーナヤーマ」は、ヨガの八支則で4番目の項目で、『調気法、呼吸法』と表され、『呼吸を整えること』を示しています。瞑想に向けて、エネルギーの流れを調整し、体内の毒素を排除し、ストレスを軽減します。ヨガを実践する際、プラーナヤーマを学ぶことで、体と心の調和を取り戻す手助けができます。
プラーナーヤーマとは
【プラーナ】=体内外に存在する生命エネルギー
【アヤーマ】=制御、制止、延長
FIRSTSHIP. RYT200テキスト
生命エネルギーとは、五感や消化吸収など、生きている体でできることを示しています。RYT200の授業において講師の方は、『死体にはできないこと』と表現されていました。いちいち頭で考えなくても体が勝手に進めてくれる生命エネルギーのはたらきを、意識的に呼吸を深めることでコントロールしていくことをヨガでは実践していきます。
5つのプラーナ
体内には以下の5つのプラーナが存在すると言われています。
【プラーナ・ヴァーユ】呼吸や神経をコントロールする
【ヴィヤーナ・ヴァーユ】食物や呼吸からエネルギーを体全体へ運ぶ
【サマーナ・ヴァーユ】消化を助ける
【ウダーナ・ヴァーユ】空気や食べ物を取り入れたり、話したりする能力を司る
【アパーナ・ヴァーユ】排泄、月経、出産等をコントロールする
FIRSTSHIP. RYT200テキスト
「ヴァーユ」とは、風の神様の名前です。ヨガはインド文化が土台となっていますが、生命エネルギーは風として考えられていたのかもしれません。
プラーナの流れを整えることで、生命エネルギーとしての体内システム(血液循環、発声、呼吸、消化、排せつ等)を正常化させます。そして、クリアな思考と安定したメンタルを獲得することができます。(参考1)
呼吸法の効果: ストレス解消とリラクゼーション
「ヨガと呼吸」の実践によって、日常のストレスや緊張を効果的に解消できます。研究によれば、呼吸法を行うことで交感神経と副交感神経が調和し、リラックス状態に入ります。これは、心拍数の安定やストレスホルモンの減少といった具体的な効果をもたらします。
呼吸法とストレス解消
呼吸とストレス解消の関係はあるのでしょうか。
ストレス解消の一つとして、息を吐く時間を長くしてみることが有効と言われます。それはなぜでしょうか。
呼吸において重要な筋肉は横隔膜です。横隔膜は、息を吸うとき縮まり、息を吐くときに緩む性質があります。そのため、浅い呼吸を繰り返すと、その分横隔膜が疲れてしまいます。そこで、息を吐く時間を長くしてあげて、横隔膜を休ませてあげることが、ストレスを解消する第一歩となります。
たまには目と頭と横隔膜を休めると、不調はとれるかもしれません。座禅による呼吸法、ゆっくりと吐く呼吸が推奨されるのも、横隔膜の張りをとってあげる意味合いがあるのでしょう。
鈴木郁子. 自律神経の科学「身体が整うとはどういうことか」. 講談社, 2023 P157
リラックスするとは
自律神経の観点で言うと、リラックスした状態は、副交感神経が働いている状態と言えます。
わたしたちは仕事や家事、育児などで忙しかったり、緊張したりすると、身体がストレスと戦う体制になります。それが、交感神経が優位になっている状態です。
交感神経が優位になることで、わたしたちは緊張や不安のなか、戦うことができるのですが、時々休ませてあげることが重要です。
交感神経の代わりに副交感神経を優位にするためには、深い呼吸をすることが効果的です。深い呼吸により、心臓の副交感神経活動を高めることができます。ヨガの流れの中でも深い呼吸を意識することで、こころをリラックスさせていきましょう。
呼吸法の実践: 心と体の調和を取り戻す
ヨガの呼吸法は、瞑想セッションや日常生活に取り入れるのが容易です。基本的な呼吸法を実践することで、心と体の調和を取り戻し、リラックスと平静を実現できます。ここでは、シンプルなプラーナヤーマの実践方法を共有します。
今の呼吸を感じてみましょう
今この記事を読んでいるあなたは、どんな姿勢ですか。スマホを見ているその目はバキバキ、肩はガチガチではありませんか。いったん目を閉じて、肩の力を抜いて、楽な姿勢になりましょう。環境が許される人は、仰向けになって観察してみてもよいです。そして吸う息と吐く息の長さを確認してみてください。どちらの方が長いでしょうか。どちらの鼻が通りやすいでしょうか。浅い呼吸、深い呼吸、胸の呼吸、お腹の呼吸。。。
今の呼吸がどんな状態であっても問題はありません。ヨガにおいては、瞑想に向けてあらゆる呼吸法を実践しますが、瞑想時には吸う息と吐く息の時間が一緒になると言われています。
成人は1分間に12~20回呼吸をします。1日にすると2万~2万5千回となり、1年にすると6~7億回もしていることになります。無意識のうちにこんなに呼吸しているとは驚きですね。
完全呼吸法の実践
では、ヨガの呼吸法の1つである完全呼吸法という呼吸法を実践してみましょう。完全呼吸法とは、お腹、胸、鎖骨の順で空気を満たしていくことで、吸うことと吐くことを最大限に引き出す効果的な呼吸法です。とっても気持ちよいので、ぜひ楽しんで、実践してみてください。
手順は以下の通りです。初心者の方は、一度目を通した後に実践することをお勧めします。また、呼吸を2-3秒止める箇所がありますが、まずは呼吸を止めずに、お腹、胸、鎖骨と順に空気を入れていくイメージで取り組むとよいと思います。できそうであれば少しずつ息を止めることに挑戦してみてください。無理せず、楽しんで行えるようにご自身で調整していきましょう。無理をしないこともヨガの道のひとつです。
~準備~ ①まず背筋が伸びる姿勢で座りましょう。あぐらや正座、心地よいものを選んでください。下に座布団やタオルを敷いた方が安定するかもしれません。 ~吸うパート~ ②鼻からゆっくり吸います。 ③まずお腹を空気で満たします。 ④2-3秒呼吸を止めます。 ⑤鼻から息をゆっくり吸い、お腹の空気を満たしながらろっ骨を空気で満たします。 ⑥2-3秒呼吸を止めます。 ⑦鼻から息をゆっくり吸い、お腹、ろっ骨の空気を満たしながら鎖骨まで空気で満たします。 ⑧2-3秒呼吸を止めます。 ~吐くパート~ ⑨胸の位置を維持しながらお腹をへこませつつ息を吐きます。 ⑩胸を戻しながら息を吐きます。 ⑪鎖骨を下げながら息を吐ききります。 ②から⑪を繰り返します。
まとめ
「呼吸」はヨガの基本であり、心身の調和を取り戻すための重要なツールです。呼吸法を実践することで、ストレス解消、リラクゼーション、そして内なる平和を見つける手助けができます。ヨガの世界で、呼吸法はあなたのヨガの旅を成功に導く重要な要素です。日常生活に取り入れて、心身の調和を実現しましょう。
参考文献
この記事は、下記書籍およびFIRSTSHIP. RYT200テキストを参考にしています。