【ヨガ哲学の基礎】ヨガ・スートラの八支則について徹底的に解説します

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ヨガ哲学とは、ヨガの歴史を通じて人々に受け継がれてきたヨガの目的や定義、考え方のことです。ヨガの起源は古代インドにあり、はじめは胡坐(あぐら)と瞑想のみだったと言われています。

古代より引き継がれた経典をもとに、現在のポーズ主体のヨガと変化していきました。この記事では、現在のヨガ哲学に通ずるヨガの経典ヨガ・スートラの八支則を徹底的に解説します。

目次

ヨガ・スートラから読み解くヨガ哲学

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ヨガ・スートラとは

ヨガ・スートラとは、400-500年に聖者パタンジャリによって記されたヨガの重要な経典の一つです。
『スートラ』は、『糸』や『簡潔であること』、『文献』という意味があります。ヨガ・スートラは全4章195のスートラで構成されています。

インドは丸暗記のスタイルが定着しているため、1つ1つが短い文章でまとめられています。
1章2節において、ヨガは心のはたらきを定めるものヨーガ チッタ ヴルッティ ニローダハと定義されました。

2章に記載された「アーシュタンガ・ヨガ」は日本語で八支則とも言われ、瞑想のプログラムとして広く人々に受け入れられています。

八支則とは

八支則は瞑想のプログラムとして知られていると記載しました。
では、その瞑想の目的は何でしょうか。

それは、ヨガの定義である、心のはたらきを定められている状態
別の言い方をすると、揺るぎない自己の本質にとどまること。

それは、ヨガをする人があらゆる苦悩から自由であると感じる状態で、『サマーディ』と言います。
このサマーディに至るまでの8ステップが八支則です。

ヤマ【禁戒】

「ヤマ」は『禁戒』と表され、『日常生活で行わない方がよいこと』を示しています。
アヒムサー(非暴力)、サッティヤン(正直)、アステーヤ(不盗)、ブラフマチャリア(禁欲)、アパリグラハ(不貧)の5つとされています。
これらは、生きていくために環境と仲良くなるためにしないこと、であり、『サマーディ』までの第一ステップになります。

そして、記述した順から優先順位が高いとされています。視野を広げ、調和を乱すことに気づき、やらない、という選択をすること。どれも小学校の道徳の授業で習うような、社会生活を送るうえで大前提になる部分化と思います。しかし、そのためには視野を広げ、あらゆる可能性を考える必要があります。なので、大人になっても難しいと感じることが多いのではないでしょうか。

アヒムサー【非暴力】

アヒムサーは『非暴力』と表されます。意味は文字通り、人や生き物、環境を傷つけないこと
そして、自分自身をも傷つけないこと
身体、言葉、を使った暴力だけでなく、思考を使った暴力も厳禁です。
「ア」は否定、「ヒムサー」は痛み、という意味を持ちます。視野を広げ、ヒムサーに気づくことから始まります。
ヨガのポーズにおいては、効果的な範囲と、暴力的な範囲との、境界線の見極めが重要。
インストラクターであるならば、生徒にけがをさせないよう声掛けすること。
会社員であるならば、同僚を傷つけないよう配慮した言葉を選ぶこと。
家に帰ったら、家族を悲しませないよう尊重し、気遣うこと。

サッティヤン【正直・素直】

サッティヤンは『正直・素直』と表されます。意味は文字通り、嘘をつかないこと
そして、誠実でない言葉を話さないこと。
少し難しそうですが、自分の「言葉」・「行動」・「思考」を一致させることを意識していきます。
真実を話し、真実を見つめ、受け入れること。あらゆるものを、ありのままみること
例えば、バランスポーズにおいての真実は『揺れること』です。
揺れていても「ダメ」と思わないこと。それが真実だから、そのまま受け入れること。
そうすると、練習する中で次第に安定感が増してきます。
注意点としては、正直な気持ちであっても、人を傷つける(その人のためにならない)のであれば言わない、ということです。この場合は『アヒムサ(非暴力)』が優先されます。

アステーヤ【不盗】

アステーヤは『不盗(ふとう)』と表されます。意味は文字通り、盗まないこと
あまり聞いたことない言葉ですが、広辞苑にも『不盗(ふとう)』は載っていませんでした。
筆者が調べたところ、仏教の言葉である『不偸盗戒』が最も近い意味かと思います。

不偸盗戒とは人の物を盗んで自分の物にしてしまうことです。

不偸盗戒とは | 高野山真言宗やすらか庵 (yasurakaan.com) 2023年10月19日閲覧

人の『物』を盗まないこと。『物』には、『アイデア』や『時間』、『能力』、『やる気』、『成長するチャンス』なども含まれます。
日常生活においては、相手の時間を奪わないために約束した時間を守ること、などもアステーヤに含まれます。

ブラフマチャリア【禁欲】

ブラフマチャリアは『禁欲』と表されます。こちらは、異性に対して不誠実な態度をとらないこと
欲に流されず、やりたいことにエネルギーを注ぐことが重要です。
こちらも仏教の言葉である『不邪淫戒』が最も近い意味かと思いました。

不邪淫戒とは男女間の淫らな行いを禁止する戒です。

不邪淫戒とは | 高野山真言宗やすらか庵 (yasurakaan.com) 2023年10月19日閲覧
アパリグラハ【不貧】

アパリグラハは『不貧(ふとん)』と表されます。『貧しくならない』と読めるため、お金を稼ぐ、という意味かと思われがちですが、そうではありません。
物への執着をなくしていきましょう、という意味になります。こちらも広辞苑に載っていませんでした。
必要以上に物を持たないこと。人に対しても、必要以上に執着しないことが重要です。
ヨガにおいては、すべてのものは借り物、と考えます。借り物なので、自分のものは何もありません。

ニヤマ【勧戒】

「二ヤマ」は『勧戒』や『歓戒』と表され、『日常生活で行うとよいこと』を示しています。
シャウチャン(清潔)、サントーシャ(知足)、タパス(規則)、スワーデャーヤ(聖典の学び)、イーシュワラプラニダーナ(神への祈念)の5つとされています。
後半に行くほど徐々にわかりにくくなりますが、いずれも身も心もきれいにしていく作業になります。
『サマーディ』までの第二ステップになります。

シャウチャン(サウチャ)【清潔・浄化】

シャウチャンは『清潔・浄化』と表されます。意味は文字通り、清潔であること
シャウチャンは、ニヤマのベースとなる部分であり、外面的な部分の清潔さを説いています。
環境や物理的な部分を清潔にすること。
シャウチャン以降のニヤマでは、内面的な部分に対する清潔さを説いていきます。
外面と内面はつながっているので、どちらか一方が乱れていると、もう片方に影響します。
仕事に追われていたり、疲れているときほど、部屋が汚いことがあるかと思います。普段の生活からシャウチャンを継続することは難しいです。
ちなみにインドでは、毎日洗った服を必ず着るそうです。シャウチャンが文化の土台になっているのですね。

サントーシャ【知足】

サントーシャは『知足』と表されます。意味は満足すること感謝すること
ヨガであれば、今日、クラスに参加できることに感謝すること。
仕事であれば、同僚に会えること、安全な職場があることに感謝すること。
できないことより、できることに意識を向けていくことが重要です。
「サン」は「どんな小さなことでも」、「トーシャ」は「幸せ」、という意味を持ちます。
満足することは、練習により得られると言われています。
ヨガにおいては、生きるとき、すでに必要なものは与えられていると考えます。
酸素、光、周りの人など。すべてが満足、感謝の対象です。

タパス【規則・苦行】

タパスは『規則・苦行』と表されます。意味は規律ある生活をすること
規則と苦行が並列なのは、ある人にとっては規律であり、ある人にとっては苦行になりうるものだからです。
私たちは朝起きてから寝るまで、選択の連続を生きています。そこで、規則が役に立ちます。
誰かと共同生活するとき、仕事をするときも、規則があることで安心して進めることができます。
苦行になりうるけど、やる価値はあります。心の強さを保つことが重要です。

スワーデャーヤ【聖典の学び】

スワーデャーヤは『聖典の学び』と表されます。意味は文字通り、聖典の勉強をすること
聖典に興味を持ち、この文章を読んでいる皆さんも、スワーデャーヤができています。
アヒムサを見直してみたり、身の回りを片づけることも、勉強の一つですね。

イーシュワラプラニダーナ【神への祈念】

イーシュワラプラニダーナは『神への祈念』と表されます。意味は大きな力を理解し受け入れること
大きな力とは、人間の力ではどうにも動かせない力のことです。天気とか、戦争もそれに含まれると思います。
期待をしすぎないこと。私たちの力だけで未来は制御することはできません。
色々なことが起きるけれども、それらはすべて神様のギフトとしてとらえることを勧めています。
一見、諦めのようにも感じますが、すっと力を抜かせてくれるやさしさもあるような気がします。
私たちは、できることをするしかないということですね。

アーサナ【座法】

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「アーサナ」は『座法』と表され、『身体を整えること』を示しています。
現在のヨガにおいて、ポーズはアーサナと同義語として使用されていますが、もともとアーサナにはポーズの意味はありませんでした。
瞑想に向けて長時間座る場合に、身体がしびれたり、疲れたり、どこか痛かったりすると、集中することはできません。
『サマーディ』に至るためには、日々身体を整えることが重要と説いています。

プラーナーヤーマ【呼吸法】

「プラーナーヤーマ」は『調気法、呼吸法』と表され、『呼吸を整えること』を示しています。
アーサナで身体を整えた後は、呼吸を整えていきましょう。
「プラーナー」には、『エネルギー』や『気』という意味があります。
今、吸う息と、吐く息、どちらの時間が長いでしょうか。
呼吸を見つめると、吸う息の時間と、吐く息の時間の長さが同じになると言われています。

ブラッディャハーラ【制感】

「ブラッディャハーラ」は『制感』と表され、『感覚器官をコントロールすること』を示しています。
上記の馬車で言う、馬をコントロールするところです。
馬は、外側の情報をキャッチしようとします。しかし、サマーディは内側を見つめる作業なので、外側の情報はいったんお休みしてもらいましょう。
ゆっくりと内側を見つめる時間にしていきます。ここで視覚情報を遮るため、目をつむることが多いです。

ダーラナー【集中】

「ダーラナー」は『集中』と表され、文字通り『集中すること』を示しています。
いよいよ瞑想の段階に入っていきます。ここでは、まず何を考えるか対象を作ります。心を乱している不要な思考をしないためです。
もし余計なことを考えていたら、すぐに作った対象へ意識を戻していきましょう。

デャーナ(ディヤーナ)【瞑想】

「ディヤーナ」は『瞑想』と表され、文字通り『瞑想すること』を示しています。
ダーラナーで決めた対象から思考が外れていたら戻す、また外れたら戻す、を繰り返していきます。
ダーラナーとの違いは、その集中の度合いです。ダーラナーの段階では、努力して集中している状態である一方、ディヤーナの段階では、より自然に集中できている状態です。

サマーディ【三昧】

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「サマーディ」は『三昧(さんまい/ざんまい)』と表され、『瞑想が完了し心が安定すること』を示しています。
ディヤーナの段階を経て、自分の意思で対象のみに思考をとどまらせている状態になります。
ヨガの定義である、『心のはたらきを定めるもの』を体現している状態ですね。心が変わるもの、動くものという大前提の上で、サマーディの状態においては、心は非常に安定しています。
どんな状態かわかりにくいので、いくつか本を引用させていただきます。

集中(瞑想)している対象と調和が生まれ、一体感を感じる。

Makoto. すぐひける ヨガポーズパーフェクトバイブル. ナツメ社, 2018 第9刷 P17

万物との一体感を味わう

ヨーガにおける最終段階。

Satori Sankara/久保玲子. YOGA ポーズ大全.成美堂出版,2019 P211

まとめ

今回は、現在のヨガ哲学に通ずるヨガの経典ヨガ・スートラの八支則を徹底的に解説しました。少しでもヨガに興味を持っていただけましたら幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

この記事は、下記書籍およびFIRSTSHIP. RYT200テキストを参考にしています。
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